2015年 12月 22日
幸田露伴の本にも解説本がいくつかありますが、本物の雰囲気、迫力は原文を読まなければ伝わりません。あくまで自分のために整理していますので、できれば原文をお読みいただくことを強くお勧めします(パーシャルデンチャー:歯科評論別冊1981)。※文章が難解だということでは決してありませんので、悪しからず・・・ Ⅰ. パーシャル・デンチャー装着の功罪 欠損部が大きくなることにより生ずる問題は、装置または補綴物の動揺であり、残存歯だけでなく顎堤に対してもそれを最小にすることを、まず考えねばならない。床の動揺は顎堤の吸収を著しく速めるが、顎堤の吸収はそれ自体が問題であるだけでなく、二次的に残存歯を動揺させる結果にもなるからである。 Ⅱ. パーシャルデンチャーの動揺 補綴物の動揺は、動きの性質とその量とに分けて考えることができる。(中略)補綴側の欠損形態は力の性質に、対向関係や嵌合位の安定性は力の量に、密接な対応関係をもっており、その積により義歯の安定性や予後は左右されるが、一般的に後者の方が大きな影響をもっている。 Ⅲ. 力のコントロール(加圧と受圧) 義歯の動揺に対する臨床的対応策は、咬合状態の改善などによって、発生する力をコントロールすること(加圧)と、その力を支台装置や義歯床を介して、歯牙と顎堤に配分負担させること(受圧)に大別される。(中略) (全顎的な処置が必要な場合にも)代償と改善効果を対比の上で、クラウン・ブリッジや総義歯で要求されるようなバランスのとれた咬合関係に再構成すべきである。この場合、オーバーデンチャーのように、すべての咬合面が可撤部側にある形式の方が、クラスプ・デンチャーのように固定性の部分と可撤性の部分に二分するより咬合接触関係のバランスも崩れにくく、製作上や術後の点検上からも有利になる。 Ⅳ. テレスコープの臨床的評価 1.単独の支台装置として 1)理想的なレスト 咬合することによって外冠は内冠に圧着されるので、SupportがRetentionの補佐をする、しかも軸面はすべてBracingの役を果たすので、ごく少数歯の場合以外は、内外冠のフリクションをそれほど強くしなくても、患者は不自由を感じず、S>B>Rという望ましい性格が形成されやすい。 2)単純な構造・形態 3)優れた清掃性 4)歯冠形態の改善 2. パーシャルデンチャー全体として 1)固定効果:Rigid Support 2)単純な全体の形態 3)製作工程上の利点 Ⅴ. 経年変化への対応 きめ細かな検討のすえ設計された補綴物であっても、所詮生体の変化に追従することはできない。したがって、装着後に起こるであろう変化を予測し、それを最小とするために、またその後に補綴物が生体の退行性の変化を加速することがないように配慮することが、生体側とのギャップを少なくする有効な手段である。(中略)パーシャルデンチャーの装着は、補綴的なオペの開始を意味するものであって終了ではない。設計がヨコの診断とするならば、アフター・ケアーについての計画がタテの診断で、この2つが組み合わされて、局部義歯補綴が1つの治療としての意義をもつものであろう。
by nakadateshika
| 2015-12-22 18:47
| 欠損補綴・高齢者
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