カテゴリ:咬合論( 9 )

2016年 11月 19日
A History of Gnathology 2
e0273912_16234651.jpg”ナソロジーとは、顎口腔系における解剖学・組織学・生理学・病理学等の見地から総合的に診査・診断・治療計画を行うことにより顎口腔系を機能的な一つの単位として捉え、その調和を図ることを目的とし治療を行う科学である。すなわち、歯だけでなく、歯をもつ人を診る学問である”

McCollumとStuartによるリサーチレポートの冒頭にはこのように書かれています。自分の中でナソロジーというと ゴールドラッシュ的なイメージがあり敬遠していたのですが、源流にはこのようなフィロソフィーがあったというのは知りませんでした。ナソロジーの日本への伝播が、ちょうど高度成長期と重なっていたことやその伝わり方の影響があったのか その辺りは定かではありませんが、どこかで少しずつ考え方がズレてきてしまったようです。

”我々がある言葉の真実性を確信するのは、必ずしもそれが論理的に優れているからではなくて、主として、そこに心を揺り動かす生命の流れが脈打っているからである。我々はまずその生命の躍動に打たれ、その後にその心理を立証しようと努める。理解は必要であるが、それのみでは、我々は決して自己の魂の運命を賭けるほどには動かされない。(鈴木 大拙)”

指導者の真意を世代を超えて伝承していくというのは、なかなか難しいことのようです。

by nakadateshika | 2016-11-19 07:12 | 咬合論 | Comments(0)
2016年 11月 17日
A History of Gnathology 1
e0273912_9531045.jpg実体験に基づくレポートにはリアリティがあります。ナソロジーの歴史について、Luciaが書いたものがありましたので読みかじってみました(咬合学事典の年表と一部食い違っているところもありますが、そのまま引用してあります)。





1925年:McCollumがヒンジアキシスを発見
1926年:McCollum、Stallerd、Stuartがナソロジカル・ソサイエティを設立(カリフォルニア)
1927年:3ピースからなるフェイスボウを開発.これにより、ヒンジアキシスの再現が可能に
1936年:臨床的に応用できる顎運動記録装置を開発.   
1937年:ナソロジーにおけるバイブル(McCollumとStuartのリサーチレポート)が発表
1941年:GrangerがMcCollumのオフィスで学び、ナソロジーを東海岸に持ち帰る
1943年:McCollumとの出会い
1944年:Grangerとの出会い. その時、McCollumとStallerdの別刷りを全部もらう.
1946年:McCollumがナソスコープを開発. 2500ドル以上の値段だったが大人気で、入手困難だった
1947年:シカゴにて、ナソスコープの使用説明セミナーが開催.
    インストラクターはStuartだったが、設定があまりにも難しく不評に終わりMcColllumにこっぴどく叱られる.
    それが腑に落ちず、Stuartは新たな咬合器開発を密かに決意したらしい
1949年:McCollumは脳卒中になり、一線を退く

by nakadateshika | 2016-11-17 09:53 | 咬合論 | Comments(0)
2016年 11月 14日
時代の寵児
e0273912_19153028.jpg1918年 Schweitzerが歯科医師としての道を歩み始めた丁度その頃、ハリスやオルトンによって鋳造冠(キャストクラウン)の道が拓かれ 有歯顎咬合論の創世期を迎えたというのは 何か運命的なものを感じます。
歯科に限ったことではありませんが、時代のニーズと傑出したタレントが合致したとき 飛躍的な進歩が遂げられてきました。オーラルリハビリテーション(欠損補綴)の歴史においても、その重要な局面で様々な時代の寵児たちが登場しています。Schweitzer はその創生期をリードした一人であり、その後にはMcCollum、Posselt、Garber、Ishihara、Kaneko et al. へとそのバトンは引き継がれていくことになります。

”オーラルリハビリテーションは、その当時まだ未開の領域だった。卒後12年間は地元のオフィスで修復処置をメインに治療を行っていたのだが、この期間に1歯単位の治療を学ぶと同時に 1口腔単位で診断することの重要性を学んだことは、その後 患者を”ひと”として診断し治療していくうえでとても意義深かった。その後1931年にイエテボリで開かれた学会において 当時オーラルリハビリテーションのパイオニアであった K.Thorlief の講演(顎位低下と補綴処置)に衝撃を受け、この分野に自分の軸足を置くことを決心したのだ(当時30代前半)。”

歩み始めたきっかけが deep biteだったというのもまた、運命的です。

by nakadateshika | 2016-11-14 19:16 | 咬合論 | Comments(0)
2016年 05月 03日
EPILOGUE
e0273912_1644829.jpg歯科医療は、非常にやりがいのある職業である。しかし、一つ一つの処置に対する原因と結果を見定めるためには かなりの時間を要するという制約があり、歯科医師一人の職業寿命という限られた時間の中で 歯科医学という深遠膨大な世界をすべて見渡すことは絶望的なことのように思われる。しかし 私にとっては、探求の旅 それ自体が想像以上に面白く、その足を止めることができなかったのである。今の若き歯科医師達が、私の臨床姿勢を引き継ぎ この探求の旅を続けてもらえるのであれば、望外の喜びである。

その意志を引き継いだ息子(Robert Schweitzer)は、こんなことを書いています。
”私は本書を読んで、歯科臨床では 疑問ー観察ー記録を 日々繰り返していくことが何よりも重要であるということを学んだ。そして、その結果を(先入観や偏見に惑わされずに)ありのままに受け入れ、思惑が外れてしまった結果(理論と実際とのギャップ)に対しても 真摯に向き合うように心がけている。真の科学者というものは、自分の考えを打ち破られる(否定される)ことを恐れることはなく、むしろ壊されることによって新たな考えに到達することにこそ 喜びを感じるものだから。”

by nakadateshika | 2016-05-03 08:07 | 咬合論 | Comments(0)
2016年 04月 30日
プロフェッサーの結論
e0273912_728150.jpg1. たとえ不正咬合であっても、顎口腔系に問題が生じていなければ 介入すべきではない。

2. 顎口腔系に問題があり、オーラルリハビリテーションが必要な状態であれば、数多くある咬合論の中からどれか一つを選択して治療を進めるべきである。あらゆる咬合論を実践した長年の経験から、どの咬合理論も大差がないということがわかった。すなわち、重要なことはどの咬合論(咬合器)を選択するのか、ということではなく、歯科医師や歯科技工士が何を考え咬合器をどのように使うのか、ということである。

3. オーラルリハビリテーションを行う症例は、大きく二つに分けられる。
①咬合崩壊の原因が、患者の不注意(プラークコントロール不良)や医原性(咬耗を引き起こす材料の使用など)などにあり、かつ十分なメインテナンスを行うことができる場合には、良好な術後経過を期待できる。
②咬合崩壊の原因が、全身的な問題(神経筋機構・遺伝・全身疾患など)によるものであれば、いかに経験豊富な優れた術者が治療を行ったとしても、残念ながら少しづつ歯を失っていくことは避けられない(その速度を遅くすることはできるが)。

まだまだ経験不足の自分には、巨匠の真意を掴むことはできませんが、症例とその介入時期によって、攻めてもよいものとそうでないものとがある、という風に解釈しています。その判断基準が難しいところですが、既往歴や現症、そしてプロビジョナルの経過を注意深く読み解く以外にはないという気がします。

by nakadateshika | 2016-04-30 07:28 | 咬合論 | Comments(0)
2016年 04月 29日
only individual normals
e0273912_20462595.jpg少し間があいてしまいましたが、Schweitzer先生の本を少し読んでみました。

"It is well to remember that, similar to the occlusion of human beings,
there seems to be no group normals, only individual normals.
(咬合論と同じく、全ての患者に共通する正常像というものは存在せず、あくまで患者それぞれにとっての正常像があるということを忘れてはならない)”

64年間の臨床の中で、ナソロジーをはじめとするあらゆる咬合論を実際に行い その結果を報告している先生ですから、その言葉には底知れぬ重みがあります。どうしても画一的な理想像に固執してしまいがちですが、患者さんそれぞれにとって、またその時点において何が最適なのか、よくよく考えてみる必要があるということを改めて感じました。

by nakadateshika | 2016-04-29 20:46 | 咬合論 | Comments(0)
2016年 03月 19日
適応の幅
e0273912_8253511.jpg「臨床家のためのオクルージョン」の後半部には、河村先生による生理学的見地からみた咬合論が収録されています。

・咬合問題には、歯科補綴学的な臨床の実際に立脚した考え方と生理学的な基礎的な考え方があり、理論と実際が(従来ある意味では)平行線を辿ってきておりました。しかし、これが融合し 一つにならなければ、咬合問題の真の解決は得られないといえましょう。
・生理学は生命現象、すなわち 生きているカラクリを研究する学問です。口のいろいろな働きの背後にあるカラクリ、法則を解明するのが口腔生理学です。
・若い人の場合には、生理的な順応の幅も広いのでそんなに困難でなく、形態学的な理想的咬合の方向に持っていくことが可能です。しかしある程度以上、生理的機能の落ちている年配の方の場合には、慎重に対処すべきでしょう。

咬合論というと、どうしても補綴学的視点に偏ってしまいますが、筋や神経・中枢といった生理学的要因があってはじめて動的平衡が保たれているということを改めて認識しました。補綴設計を考えるうえでも、生理学的な要素への配慮も必要であり、(高齢者のように)適応力や順応性が低下してきている場合には、相応の補綴設計を選択する必要性を感じました。その一方で(先達の臨機応変な補綴設計を拝見すると)、歯科医師としての適応能力の幅や懐の深さに関しては、年齢・経験とともに 益々広がるということをしみじみ感じます。

by nakadateshika | 2016-03-19 19:28 | 咬合論 | Comments(0)
2016年 03月 17日
咬合論のルーツ
e0273912_7475234.jpg昨日は、若手論文抄読会(LS会)で 石原咬合論のルーツともいえる論文(咬合に関する見解の種々相)を読みました。

・適正位を求めるための各下顎位の信頼性は同程度であるから、1つの方法に頼らず 総合的な判断が必要であろう。
・複雑な咬合器を使用することなく、直接法で咬合を診断し かつ再現する方法も、目的に応じ簡便正確であるならば、臨床的に極めて価値の高いことはいうまでもない。
・full balanceやcuspid protectionを機械的に考えることなく 症例に応じた適応を考え、真に合理的な咬合力の配分を 各個体についてはかるためにいかにすべきかが問題であろう。

50年程前の論文ですが、現在にも通用する(というよりその正当性が証明されてきている)咬合論が展開されていて、その先見性には目を見張ります。また、咬合論全般について各要素ごとに分類・整理されているので、自分なりに咬合論をまとめていく基軸としてもうってつけの教材なのではないかと感じました。

by nakadateshika | 2016-03-17 06:58 | 咬合論 | Comments(0)
2015年 05月 18日
咬合力と咬合高径
http://www.wasiduka.com/blog/index.php?no=r14より引用

咬合高径の変化と咬合力の関連性については従来よりさまざまな検討がなされており、Boosは下顎安静位で最大の咬合力を発揮するとし、これは咬合高径に対する判定基準に有用であることを報告している。一方、Boucherらは最大咬合力を指標として求めた咬合高径は、臨床的に求めた咬合高径よりも高い位置にあると報告している。平林、Mackennaらも垂直的な開口量が中心咬合位よりも10mm以上の位置で最大咬合位が発揮されると報告している。

そこで、なぜこのように安静位よりも開口した位置で咬合力が最大もしくは、最も効率よく発揮できるのであろうか。四肢筋では、筋長が静止長(または生理長)にあるとき、筋収縮を行うと筋原繊維を構成するアクチンとミオシン間にクロスブリッジが最も多く出来るので、このとき筋の全張力は最大になることが知られている。
そうすれば、閉口筋についても咬頭嵌合位より10mm~20mm開口した下顎位にあるときミオシンとアクチンのクロスブリッジの形成が最もよく行われる位置であると推察できる。

もしこの推察が正しければ、中心咬合位は、閉口筋が静止長よりかなり短い筋長にあることになる。難い食物を粉砕・臼磨するときにはこの位置よりさらに開口した位置で食物を噛みしめるので、より効率よく力を発揮できる機構になっている。

いいかえれば、生体において中心咬合位は、最大の咬合力・咀嚼力を発揮する下顎の位置ではないが、その位置から少し開口した位置で食物を咀嚼するときに最も効率良く咀嚼力が発揮されるような基準位置に設定されているといえる。そして、筋紡錘の側からみれば、下顎が中心咬合位にあるとき、閉口筋が収縮しているにもかかわらず、決して弛緩することなくある程度の緊張を保つことが出来、この位置から開口することによって筋紡錘が伸張されると、さらに興奮性が高まって下顎張反射を介する閉口筋への入力が高まるような位置であるといえよう”

by nakadateshika | 2015-05-18 08:41 | 咬合論 | Comments(0)