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2016年 12月 18日
既存顎位で対応した長期経過症例
e0273912_85472.jpg最初のセクションでは、咬合再構成を行わずに既存顎位で対応した2症例を提示していただきました。ともに20年以上にわたる長期経過症例でしたので、deep overbiteの経過について、またdeep overbiteに対する介入の是非を検討するうえで極めて重要なパートになるだろうと考えていました。

Deep overbiteの視点から
成り立ち :Ⅱ級2類タイプ
力(加圧):強い
咬合(受圧条件)
case1:大臼歯咬合支持あり(右側は喪失)
case2:大臼歯部咬合支持なし、左右的偏在傾向あり

長期経過からみえてきた変化として、アーチフォームの変化(U字→V字)、アンチモンソンの進行、咬耗、顎位の低下などが共通していました。また臼歯部欠損に対して、case1では移植(経過対応でインプラント)、case2では義歯、とそれぞれ異なった対応がとられていましたが、いずれも大崩れすることはなく前歯部は守られていました。(あくまで推測ですが)的確に臼歯部咬合支持を回復されていたことに加えて、前歯部咬合支持が保たれていたことや 顎位の左右的ズレがなかったことが、比較的穏やかな経過の一因になっているのではないかと感じました。

このパートのまとめ
 1)顎位(歯列)の変化
   ・下顎後退の可能性
   ・下顎前歯部の挺出
   ・U字からV字へ
 2)欠損の進行
   ・欠損進行のリスクはあまり高くない
   ・すれ違いへの流れはそこまで強くない
   ・前歯部はあまり失われない
 3)欠損への対応
   ・小臼歯部の咬合支持が重要
   ・移植やインプラントも有効
   ・義歯で対応できるケースも(改変の見極め)

by nakadateshika | 2016-12-18 08:14 | 勉強会・講演会 | Comments(0)
2016年 12月 18日
介入の時期と程度
e0273912_74063.jpgもう1本の軸足が、deep overbiteに対する介入の時期と程度をどのように判断するのか?という論点でした。

Deep overbiteの問題点として、力の強さ(ブラキシズム)・補綴間隙・前歯部咬合接触・ガイド・咬合平面等々考えられます。力へのアプローチがなかなか難しいということから、一般的には咬合関係の改善によって対応することが多いと思われますが、そのためには(前述のとおり)歯質の大量切削や咬合挙上といった大がかりな処置が必要となるため、本当に必要な処置なのか、いつ・どこまでやるべきなのか?ということは非常に悩ましいところです。

そういったイメージをどのように表現すべきかかなり悩んでいたのですが、特別ゲストとしてご出席いただいた押見先生の名著:線を引かない歯科臨床の中にうってつけの図説を発見し、(書籍の中ではブラキシズムの項において掲載されているのですが)deep overbiteにおける力の問題と、それを受け止める環境(オクルージョン)をいつ・どこまで改善するのか?という論点が非常にわかりやすかったので、僭越ながら引用させていただきました。よくよく考えてみると、deep overbiteに関わらず欠損歯列ひいては歯科臨床すべてに通ずる問題点がこの1枚に凝縮されているのではないかとも感じます。
これで、今回の企画を進めていくうえでの両輪が定まりました。

by nakadateshika | 2016-12-18 07:04 | 勉強会・講演会 | Comments(0)
2016年 12月 17日
Deep overbite の成り立ち
e0273912_705950.jpg欠損歯列を読み解くうえで、ヒストリーは極めて重要です。Deep overbite においても、その成り立ちを考えることは 咬合高径や咬合平面に対する介入の是非を判断する際に、非常に重要なファクターとなります。

Deep overbite を伴う欠損歯列では、その成り立ちにおいて 先天性因子(永久歯列完成前)と後天性因子(歯周病・咬耗・欠損)が複合的に関係しています。その先天性因子を分類するための裏付けとして、最初に目をつけたのはRicketts・Sassouni・Shudyらが提唱するフェイシャルパターンでした。

Deep overbiteというと 一般的にはローアングル(ブレーキー)というイメージでしたが、ハイアングル(ドリコ)でも下顎前歯部の挺出や舌側傾斜によってdeep overbiteとなる場合があります。それぞれのタイプに応じて、咬合力の大きさ・咬合平面の湾曲度・顎位の安定性、偏位傾向などの違いがあるため、各症例におけるdeep overbiteの成因を探るうえでとても有効なのではないかと考えました。ただ、この見方によって見えてきたものも少なくなかったものの、すべての症例でセファロ分析を行っているわけではなく また自分の知識もあやふやだったところもあり、この概念を軸に進めていくことにはかなり不安がありました。そのような時、須貝先生より成り立ちに関する症例スライドをいただきました。

あれこれ文献的に話をこねくり返してみても、臨床例の雄弁さには全く歯が立ちません。それに加えて、経験豊富な須貝先生の解説ですので、説得力も絶大です。これで今回の企画における軸足の一つが定まりました。

by nakadateshika | 2016-12-17 08:28 | 歯科臨床 | Comments(0)
2016年 12月 16日
Point of view
e0273912_6584517.jpg会員からdeep overbiteを伴う欠損歯列の症例を募集したところ、17症例集まりました。いずれも興味深い内容の症例ばかりでしたが、今回は時間的制約もあることから、その中から経過が長い症例を8症例ピックアップすることにしました。

”欠損歯列のみかた”という点において、これまで火曜会では 咬合支持が最も重要視されてきました。現在ではさらに歯周病・顎位・力・歯種特異性といった要素を加えたKA367というフォーマットを活用して症例分析を行っています。その結果として、すれ違いや偏在といった欠損歯列の分類や、難易度の評価など欠損歯列における様々な側面が明らかにされてきました。この成果は、多くの症例経過を”咬合支持”という視点を通じて 集めて・並べて・較べてみた結果として得られたものではないかと思います。

そこで今回は、咬合支持という観点をベースにしたうえで、新たにdeep overbiteという視点を通じて8症例を比較検討することにより、欠損歯列における新たな一面が見えてくるのではないか?という期待からこの特集が企画されました。ただ、deep overbite という定義はあくまで前歯部の位置関係によって決まる用語であり、ひとくちにdeep overbiteといっても様々な種類があることがわかりました。そこで、ディスカッションのフォーカスを絞るために何らかの視点が必要であると考えました。それが、deep overbiteの成り立ちとその問題点です。

by nakadateshika | 2016-12-16 07:02 | 勉強会・講演会 | Comments(0)
2016年 12月 15日
2016年 火曜会企画
e0273912_8531084.jpg2016年、最後にして最大の懸案事項であった火曜会企画が無事終了しました。

”生体としての恒常性とひとりひとりの個別性 ¹”という縦糸と横糸によって紡がれた口腔内は、力の問題や加齢変化などによって、時とともにほつれや綻びがでてきます。そういった問題を修復する時にも、恒常性と個別性との折り合いに気を配らなければ、元の生地と馴染むことができず またすぐにほつれてしまうのだろうと思います。

Deep overbiteの欠損歯列は、歯科医の視点では悲観的に捉えやすく、逆に患者側の視点では楽観的に捉えられやすいという特性があるようです。また その咬合関係を改善するためには、歯質の大量切削や咬合挙上といったかなり大がかりな処置が必要となることが多いため、どの時期にどこまで介入すべきか?という判断は、非常に難しいといえます。
そこで今回の企画では、deep overbiteを伴う欠損歯列に対して咬合再構成を行った症例と行わなかった症例の長期経過を通じて、deep overbiteの特性や問題点、また介入の時期や程度をどのように判断していくべきか等について、ディスカッションを行いました。

¹:もぐら塾案内文より
*もぐら塾は、第一期満席となりました。好評のため、今年の4・5月あたりで第二期開催を予定しておりますが、日程は現在調整中です。エントリーをご希望される場合には、申込フォームよりご登録をお願いします。

by nakadateshika | 2016-12-15 08:53 | 勉強会・講演会 | Comments(0)
2016年 11月 01日
いま、咬合の何が問題か
e0273912_2240597.jpg(金子先生のブログにも紹介されていた)1988年に行われた座談会のレポートです。一地方歯科医師会が国際シンポジウムを開いたこと自体が驚きですが、その内容にも目を見張ります。今読んでみても古びた感じは微塵もなく、特にProf.McNeillの言葉が印象的です。

”歯の診察を急ぎすぎて歯科学的な要素の相互関連に注意を払いすぎる結果、患者の総合的な健康度をないがしろにしてしまうことは、われわれ歯科医に共通な欠点だと思います。”
”何年もかかって極端に小さくなった高齢者の垂直的顎間距離を、すぐに しかも大幅に増加しても構わないと考えることは、生物学的に無知な歯科医のやることだと思います。”
”垂直的顎間距離を科学的に決める方法はありません。しかし、歯科医としてはこのことをあまり気にすることはないでしょう。普通のかぜを治す薬もなければ治療法もない。かぜさえも治せない世の中なのですから、我々が答えがないといっても別に恥ずかしくないのではないですか。”

とりわけ、最後の部分が秀逸です。咬合に限ったことではありませんが、まだまだわからないことが山ほどあり、実際には生体の治癒力や適応力に頼っていることを教えてくれているようです。全て治癒力任せというわけにもいきませんが、生体への配慮を忘れて理想的な咬合関係を闇雲に求めてしまうことが一番の問題なのではないかと感じました。

by nakadateshika | 2016-11-01 22:40 | 欠損歯列 | Comments(0)
2016年 10月 29日
Deep overbite 総論
e0273912_6475353.jpg現在、12月の企画に向けて下調べをしているところです。しかし、調子に乗ってブラキシズムや成長発育にまで手を出したところ、(まさにデスロック状態で)身動きが取れなくなってしまいました。。
”聞いて、思って、修めることが学問の法則”だと露伴師匠も述べていますが、確かにインプットばかりでは全く頭が整理できないので、少しづつでもアウトプットすることでdeep overbiteに関する知識を修得していきたいと思います。

by nakadateshika | 2016-10-29 06:48 | 欠損歯列 | Comments(0)
2016年 10月 18日
deep overbiteと全身疾患
・ディープオーバーバイトと全身疾患の関連性
ディープオーバーバイトは、リウマチや痛風、関節炎などの全身疾患が原因で生じる場合がある。これらの疾患は顎骨をはじめとする骨格自体を変化させてしまうため、筋(咀嚼筋や顎位に関連する筋)の伸展や収縮が生じる。それに伴って顎位は容易に変化するので、どれほど慎重に咬合再構成が行われていたとしても、残念ながら予後不良に終わってしまうことも十分に考えられる。

・歯科医療において重要なこと
歯科治療において理想的な咬合が重要であるということは、論を俟たない。しかし、咬合は咀嚼機能を担う一つの要素に過ぎないということも忘れてはならない。綿密な計画のもとで行った咬合再構成であっても、骨や全身状態の変化によって脆くも崩れ去る可能性があるということを、四半世紀以上に渡る臨床記録が証明している。

・歯の保存について
できるだけ多くの歯をできるだけ長く良い状態で保つことは、歯科医療が果たすべき重大な責務である。しかし、高齢者への治療では予後不安な歯の保存にこだわりすぎず、なるべく短期間で治療を終えることも時には必要であろう。補綴設計に関しても固定性に固執するのは賢い選択ではなく、場合によってはシングルデンチャーも有効な手段である。

ひとくちに咬合再構成といっても、その程度や術式によって経過は異なるだろうと思われるので、全てを鵜呑みにすることはできないかもしれません。しかしこの当時、歯科治療を”ひと・くち・は”という視点で捉えていたということや、生体と補綴物の経年変化に着目していたというのには、ただただ驚くばかりです。

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by nakadateshika | 2016-10-18 18:54 | 歯科臨床 | Comments(0)
2016年 10月 13日
もくあみ事後抄録から
e0273912_5593321.jpgもくあみ会事後抄録から、deep overbiteの範疇に入るとおぼしき症例を集めてみました。Deep overbite それ自体に問題があるわけではないですが、咬耗や挺出、さらには歯の欠損が絡んでくると、一気に難症例へと変貌する可能性があります。各症例を較べてみると、上顎の歯周組織の質によって、動揺として問題が現れるケースと咬耗していくケースとに分けられそうですが、対応の難しさとしては天然歯か補綴歯かによってもかなり違うような印象です。




deep overbiteと思われる症例を較べてみて、以下のような推論を立ててみました。
・Ⅱ級 deep overbiteであっても、臼歯部咬合支持が保たれていれば安定している。
・咬合支持が弱体化し前歯部へ力の問題が波及すると、難症例へと変貌する。
・患者の年齢や顎堤条件にもよるが、移植などによる咬合支持の回復が有効打となる可能性がある。
・高齢者の場合は、シングルデンチャーも見据えた義歯設計が求められる。
・咀嚼筋の走行から垂直的に力が加わりやすく、クレンチングを伴うことも多いため、咬合挙上は危険性が高い。
これはあくまで個人的な仮説なので、集まった症例をもとにどのようなディスカッションが繰り広げられるのか、今から楽しみです。

by nakadateshika | 2016-10-13 05:59 | 歯科臨床 | Comments(0)
2016年 10月 12日
Deep overbite
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昨日の火曜会は、2症例ともに欠損歯列の話題でした(surechigaiとdeep overbite)。いずれも自分にとっては身近なテーマであっという間の3時間でしたが、deep overbiteの症例では schweitzer先生の本と瓜二つの写真(関節リウマチを示す手の写真)があり、特に興味深かったです。咬合力や年齢など相違点もありましたが、(垂直的・水平的)顎位の設定や咬合平面是正の難しさなど共通点も多いように感じられました。Deep overbite症例はそれほど頻繁に遭遇することはないですが、集めて・並べて・較べてみると何かが見えてくるかもしれません。

by nakadateshika | 2016-10-12 06:44 | 勉強会・講演会 | Comments(0)