2017年 01月 21日
何度かご紹介したことがある名著「部分と全体」ですが、年末・年始から再チャレンジしようやく読了しました。とはいえ、物理の話など意味不明なところが大部分なので字面を追っただけというようなところも多いのですが、その中にもためになる言葉がたくさん散りばめられていて、とても勉強になりました。 ”芸術にも科学にも長い沈黙の時代とゆっくりした発展の時代があります。大きな発展のない時代に大切なのは、細かい点にまで誠実で正確な仕事なのです。全力をつくして成されなかったような仕事は、そのうち忘れられます。しかしこのゆっくりとした過程の中で時間の経過とともに問題の内容が変化し、突然新しい可能性や新しい内容が創造されます。偉大な天才は、このような経過の中から次第に姿を現してくる成長力に魔術的に引き寄せられて、二、三十年も経つか経たないうちに、せまい空間の中に非常に優れた芸術作品を創造し、あるいは大きな重要性をもった科学的な発見をすることになるのです。” ”「理解する・わかる」というのは、それを使ってたくさんの現象を統一的・相互関連的に認識できるような概念を所有すること、つまり「把握」できることだ。外見的にはこんがらがったある種の状態が、もっと一般的なものの中の特殊な場合に過ぎないものとして、より簡明に表現することができることを認識したときに、我々の思考は安定するのだ。種々様々な多様性を一般的な簡単なものに帰せしめること、「多数」を「一つ」にが、「理解する・わかった」という言葉で我々が表すものだ。” ”大きな改良をしようと思うならば、我々は小さなことから始めなければならないということは、現実の行動の領域において、何といっても優れた原則だ。そして、科学においてもこの道は、人が大きな関連を見失わない限りは広い範囲に渡って正しいものだ。ニュートンの物理学においては、部分部分についての注意深い研究と、全体についての展望という両者が確かに働いていた。” 同じくみすず書房からは、K先生が参考文献に挙げられている「多様性と個性」が発刊されています。この本では、生物学における「部分と全体」という視点の重要性と、その「部分と全体」の統合に必要なものが”直観”であることが示されています。 歯科臨床における「部分と全体」とは、すなわち「ひと・くち・は」の視点に相当する概念であろうかと思います。それぞれの要素をバランス良く考え、最適な治療方針を導きだすことはなかなか容易なことではないのですが、ベテランの先生方の症例を拝見すると、先天的、あるいは後天的(経験的)な直観を頼りに絶妙なバランスでまとめられているのがとてもよく分かります。そういった感覚的なものを学ぶのはとても難しいことですが、少しでも近づけるようになりたいと常々思います。
by nakadateshika
| 2017-01-21 01:41
| 書籍・映画・TV
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