2017年 03月 15日
ホームドクターの役割
e0273912_721847.jpg昨日の火曜会は、須貝歯科師弟コンビの共演でした。須貝先生といえば、咬合育成からフルデンチャーまでを非常に高いレベルで網羅されている理想のホームドクターですが、昨日の両演題(咬合育成と摂食嚥下)もまさに須貝歯科らしい内容で、高齢化社会という問題を抱える現代において、ホームドクターとして何をすべきか、何ができるのかについて深く考えさせられる、とても充実した3時間でした。

須貝先生のご発表では、要介護ステージでの口腔管理や補綴処置の難しさとその要点、またそのステージに至るまでにホームドクターとしてすべきことについて教えていただきました。
超高齢化社会となった現代では、クリニックに通うことができるステージよりさらに一歩先までを見据えた対応が必要とされてきています。現在の歯科界には様々な問題がありますが、要介護となるラインをまたぐ前後のステージ間で口腔管理の落差があまりにも大きいということが、もっとも重大で喫緊な問題の一つに挙げられるのではないかと思います。ただ、残念ながらいまだ十分な体制が整っていないというのが実情です。クリニックの中では歯の保存に全力を尽くす一方で、その後のステージでは歯があることでのトラブルが起こり得るという、患者・歯科医双方にとって悲しすぎる歪み現象をできるだけ緩和し、なるべくシームレスな考え方・対応ができるような体制づくりの必要性を改めて感じました。

つづいて元代診(僕の1代先輩)であるN先生は、「Deep overbiteで成人させないために」という演題でご発表されました。内容としては、咬合不正の根本的な原因は悪習癖(機能不全)であるとの仮説をもとに、筋機能や姿勢などの環境因子を是正することで本来の姿(正常な歯列)に戻そうという取り組みでした。なかでも自分としては、(イントロでの)不正咬合は文明との接触によって生じた現代病である、というお話にとても興味がひかれました。一般的に、環境の変化に生体の適応が追いつかない場合に病気となるのではないかと思われますが、あまりにも多くのことが急速に変化する現代社会では、 その変化に生体と社会の適応がまったく追いつかず 結果として様々な生体的・社会的な病気(問題)が生じているように感じます。
咬合不正についても食生活などの変化により、後天的因子の影響を受ける顎骨の成長と先天的因子の影響が大きい歯牙の大きさとのアンバランスが原因であるとも考えられます。長い時間が経過すれば遺伝子レベルで適応反応が生じるのかもしれませんが、それまで待っているわけにもいきません。機能と形態、アプローチの仕方はどちらの方法もあり得ると思いますが、変化に対する適応力が最も高い小児期において咬合育成を行うことは、とても有意義なことだと感じています。

”良いものはカタツムリのように(ゆっくりと)進む”

かつてガンジーは、現代文明に警鐘を鳴らす意味でこのような言葉を発したそうです。その意味するところは深遠ですが、要介護の問題や咬合不正の問題もそこに端を発していると考えられなくもありません。ただ残念ながら歯科医には社会構造まで変える力はありませんので、ホームドクターの役割としては 環境の変化と生体の適応との歪みを補正するべく、カタツムリをそっと後から押してあげるような対応が望まれているように感じています。

by nakadateshika | 2017-03-15 06:46 | 勉強会・講演会 | Comments(0)


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