”愛の奥義に至る正しい道とは、地上の個々の美しきものから出発し、最高美を目指して絶えず、高く登りゆくことである。(ちょうど梯子の階段を昇るように)1つの美しい肉体から2つの肉体へ、2つの肉体からあらゆる美しき肉体へ、美しき肉体から美しき職業活動へ、さらにそこから美しき学問へと到達し、最終的には美の本質を認識するまでに至ることである。
すなわち、エロース(愛)とは、肉体の美から精神の美、さらには知恵を愛すること(フィロソフィア=哲学)にまで到達することである。”
稀代の大哲学者、プラトン。その著作は名作揃いですが、その中でも最高峰と言われている「饗宴(シンポシオン)」を読んでみました。人間が真に求めるべきものは何なのか?恋愛という具体的で身近な話題から始まり、職業論や精神論を経て、最終的には無知(自身の至らなさ)を自覚し、知恵を追い求めること(哲学)こそが人間が歩むべき道である、という結論に至る論理展開は、流石の一言でした。
もう一つ面白かったのは、その構成です。まずは4人がプレゼンを行い、最後にそれぞれの演者と座長とが対話を重ねることで、そのテーマの真相に近づいていく、という流れになっています。この形式は、まさしく勉強会での形式と同じで、この本の題名(シンポシオン=ワインを片手に語り合う)がシンポジウムの語源になっているのも頷けます。例会では、いつもたどたどしい司会で反省することばかりです。舌の回りをよくするために、2・3滴のアルコールをコッソリ、というのも一案かもしれませんが、寝てしまう危険性もあるので流石に無理なようです。